NECは8月18日、約814gの超軽量13.3型ノートパソコン「VersaPro UltraLite タイプVG」を発表した。編集部より実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
13.3型第10世代Core i7を搭載しバッテリ(L)だと約814g!
同社のUltraLite タイプVGシリーズは、以前から薄型軽量ノートパソコンとして展開されており、たとえば第5世代Core i5を搭載する2015年モデルは、2,560×1,440ドットの13.3型IGZO液晶を搭載して重量がたったの約779gだった。ここで紹介するのは同シリーズの2020年版だ。
今回は、第10世代Comet LakeのCore i5/i7、メモリ16GB、SSD 256GB(オプションで128GBと512GBも用意)と、世代に合わせて性能が向上。ただし解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)になっている。また、重量は約15時間駆動のLサイズバッテリ搭載だと814g、約24時間駆動のLLバッテリでは約868gとなる。700g台ではなくなったが長時間利用でき、それでも十分に軽いことは間違いない。
さらに最近急激に需要が高まったビデオ会議用に、部屋内の音の反射を軽減して聞きやすくする「ルームエコー抑制」、雑音を排除して声のみを拾う「ノイズサプレッサー」を、ヤマハ製オーディオ機能「AudioEngine」が提供。よりビジネス用として磨きをかけている。
UltraLite タイプVGのおもな仕様は以下のとおり。
【表1】NEC「VersaPro UltraLite タイプVG」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i7-10510U(4コア8スレッド/1.8GHz~4.9GHz/キャッシュ 8MB/TDP 15W) |
メモリ | 16GB/LPDDR3(固定8GB×2) |
ストレージ | SSD 256GB(暗号化機能付) |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
ディスプレイ | 13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢 |
グラフィックス | Intel UHD Graphics |
ネットワーク | LTE(オプション)、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 |
ワイヤレスWAN | Nano SIMカードスロット(SIMロックフリー) LTE(CA対応) : B1/3/8/18/19/26/28/41 3G : B1/6/8/19 |
インターフェイス | USB 3.1×2(うち1基はType-C)、USB 3.0 Type-C(USB PD、DisplayPort対応)、HDMI、Webカメラ(オプション)、microSDカードリーダ、指紋センサー、音声入出力 |
サイズ | 307.2×216×16.7mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約868g ※リチウムイオンバッテリ(LL)搭載時 |
税別価格 | 454,000円(上記の構成) |
プロセッサは第10世代Comet LakeのCore i7-10510U。4コア8スレッド、クロックは1.6GHzから最大4.9GHz。キャッシュは8MB、TDPは15W。メモリはオンボード固定でLPDDR3 16GB(8GB×2)。ストレージは暗号化機能付SSD 256GB。OSは64bit版Windows 10 Proとなる。この手のビジネス向けではじめから16GBなのはポイントが高い。
グラフィックス機能はプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics。外部出力用にHDMIとDisplayPort Alt Mode対応のUSB Type-Cを備えている。ディスプレイは非光沢の13.3型フルHD。タッチ操作には非対応だ。
ネットワーク機能は、Wi-Fi 6とBluetooth 5.0。オプションでLTEにも対応する。SIMロックフリーでNano SIM。なお、有線LANはない。
インターフェイスは、USB 3.1×2(うち1基はType-C)、USB 3.0 Type-C(USB PD、DisplayPort対応)、microSDカードリーダ、指紋センサー、音声入出力、オプションでWebカメラ。先に挙げたようにヤマハ製AudioEngineを搭載している。
サイズは307.2×216×16.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量はバッテリLだと約814g、バッテリLLだと約868g。いずれにしても1kgを軽く切る軽量級だ。
BTOにも対応しており、価格は今回の構成(Webカメラあり、SSD 256GB、LTE、バッテリLL)で税別454,000円。内容を考えると高いが、法人向けということで、この値段設定になるのだろう。一般向けのVersaPro Jだと同じ構成で税別252,800円となる。薄く軽くするにもコストがかかり、大手メーカー製としては妥当なところだと思われる。
なおオプションでType-C Dock(税別45,000円)も用意され、専用ACアダプタから電源を供給し、HDMI×1、DisplayPort×2、Gigabit Ethernet×1、USB 3.0×3、USB 3.0 Type-Cポート(データのみ)×1、USB 2.0×2、ヘッドフォン/ヘッドフォンマイクジャック×1を装備。本体とは電源も含めType-Cケーブル1本で接続できる。
筐体は基本ライトなマットブラック。天板と裏はカーボン素材、パームレストはマグネシウムアルミ合金で構成され、地味だが堅実で飽きの来ないデザインだ。厚み16.7mmと写真からわかるようにかなり薄い。「耐150kgクラス」の頑強設計で見た目より頑丈。そしてなりより軽く、片手でフワッと持ち上がる。1kgどころか900gを切っているので、一般的なノートパソコンと比較して異次元となる。
前面は左右が狭額縁。パネル中央上にWebカメラ。左側面はロックポート、Type-C、Type-C、microSDカードスロット。右側面はHDMI、Type-A、音声入出力、ステータスLEDを配置。Nano SIMスロットは右側のヒンジの横にある。裏は手前左右のスリットにスピーカー。4隅にゴム足。
付属のACアダプタはUSB PDを利用するので、ほかの同種のACアダプタも使用可能だ。サイズは約92×39×30mm(幅×奥行き×高さ)で重量188g。出力は20V/2.25A、15V/3A、9V/2A、5V/2Aとなる。
13.3型のディスプレイは環境光センサーを内蔵しており、明るさの自動調整が可能。明るさ、コントラスト、発色、視野角すべて良好。非光沢なので眼にも優しい。パネルは180度傾けることができる。
i1 Display Proを使い特性を測定したところ最大輝度は283cd/平方m。標準は120cd/平方m。黒色輝度は0.000cd/平方mで、つまり真っ黒。リニアリティは、輝度が上がるほど各色差が広がる。G/Bは似ているものの、Rが少し高めに外れる感じだ。
キーボードは新設計となり、従来モデルの幅273.65mmから291.86mmへ。その分キーピッチは19mmを確保。手前一部だけ狭いものの、ほぼ均一でいびつな並びなどもない。
写真からもわかるように少し手前に傾き、入力しやすくなっている。キートップはフラットではなく若干のへこみあり。刻印も少し大きくなっている。打鍵感は、仕様上ストローク1.5mmと少し深めだが、クリック感もあり、またパタパタ(カチャカチャ)音もせず静音だ。タッチパッドはパームレストも含め十分な面積が確保されている。
キーボードバックライトもついていればと思うが、一般的なオフィスは明るく不要との判断なのだろう。
振動やノイズは試用した範囲ではまったく気にならなかった。発熱は負荷をかけるとおもにキーボード左上のスペースが熱を持つものの、下まで降りて来ないため問題ない。
サウンドは手前斜め下にスピーカーがついているため、間接音と直接音のミックスで耳に届く。ステレオ感は十分あり、この手のビジネス向けとしてはハイパワーだが、カマボコレンジで音楽鑑賞用には不向き。ただし、ヤマハ製AudioEngineを使い、声だけ強調するなど、ブレゼンやビデオ会議用としては使い勝手が良いよう工夫している。
欠点らしい欠点もなく、非常にバランス良く仕上がっている。これで重量900gを切るのだから完成度は高い。ビジネス向けなら文句なしと言ったところか。
ビジネス向けとしては十分な性能と12時間超えのバッテリ!
初回起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。NECグループがプリインストールのアプリとなる。デスクトップは標準のまま。このあたりはビジネス向けモデルならでは。Core i7、メモリ16GB、SSDということもあり、ブートもアプリの起動などもキビキビ動く。
ストレージはM.2 SSD 256GBのSamsung「MZVLB256HBHQ」。仕様によると、シーケンシャルリード3,500MB/s、シーケンシャルライト2,200MB/s。CrystalDiskMarkの値もほぼそのまま出ている。Cドライブのみの1パーティションで、約237.23GBが割り当てられ空き領域は188GB。
Wi-FiとBluetoothはIntel製。LTEに関してはQualcomm製が使われている。なお、Type-C Dock側のGigabit Ethernetは「USB-C Dock Gen2 Ethernet」となっており、どこのメーカー製かは不明だった。
おもなプリインストールアプリは、「PC設定ツール」、「ウイルスバスタークラウド」、「型番・製造番号表示ユーティリティ」、「働き方改善ソリューション」など。PC設定ツールは、画面キャプチャからもわかるように、バッテリ、ECOモード、ピークシフト、YAMAHAサウンドなどの設定に対応している。
なかでもYAMAHAサウンドにはMeetingというタブがあり、オンにすると「パーソナル」と「マルチユーザー」の選択ができる。前者は1人で会議に参加するモード、後者は複数で会議に参加するモード。それぞれ相手の声が明瞭に聞こえるようになる。ビデオ会議の重要性が高まっている現在、あればうれしい機能と言えよう。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Officeを実行。結果は以下のとおり。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2177 | |
PCMark 10 Score | 4,106 |
Essentials | 8,609 |
App Start-up Score | 12,699 |
Video Conferencing Score | 6,624 |
Web Browsing Score | 7,587 |
Productivity | 6,928 |
Spreadsheets Score | 7,947 |
Writing Score | 6,041 |
Digital Content Creation | 3,150 |
Photo Editing Score | 3,990 |
Rendering and Visualization Score | 1,964 |
Video Editting Score | 3,989 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,583 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,694 |
Work Accelarated 2.0 | 5,004 |
Storage | 5,077 |
3DMark v2.11.6866 | |
Time Spy | 488 |
Fire Strike Ultra | 312 |
Fire Strike Extreme | 587 |
Fire Strike | 1,218 |
Sky Diver | 4,889 |
Cloud Gate | 9,100 |
Ice Storm Extreme | 47,460 |
Ice Storm | 67,036 |
CINEBENCH R20 | |
CPU | 1,317 pts(10位) |
CPU(Single Core) | 3397 pts(6位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 3243.533 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 2343.523 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 580.342 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 999.247 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 478.777 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 379.772 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 47.067 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 155.856 MB/s |
Core i7-10510Uを搭載するノートパソコンとしては標準的なスコアだろう。
バッテリテストのPCMark 10/BATTERY/Modern Officeでは、12時間31分(明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)だった。これだけ長持ちだと、ピークシフトも十分実用レベルだ。
以上のようにNEC「VersaPro UltraLite タイプVG」は、第10世代Comet LakeのCore i7、メモリ16GB、SSD 256GBを搭載。13.3型の液晶ディスプレイは見やすく、バッテリ駆動12時間超える。さらにオプションだがLTEにも対応。そして重量は800g台と、文句なしの内容に仕上がっている。AudioEngineをビジネス向けにチューンしているのも興味深い。
個人的な好みとなるが、唯一残念な部分があるとすればキーボードバックライト非搭載なこと程度。コンシューマ向けのように派手な部分はまったくなく、ある意味地味の極致ではあるものの、仕事用として堅実な1台を求めているユーザーにおすすめしたい。
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