米国が主導する将来の有人月探査計画について、文部科学省が来年度予算案の概算要求で、新型の無人補給船や生命維持装置の開発費など約800億円を盛り込む方針を固めた。日本人飛行士の月着陸をめざして開発を加速させる考えで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の年間予算は過去最大の2800億円規模に膨らむ見通しだ。
米国は2024年以降、米国人飛行士らを月に着陸させる方針で、日本も昨秋、参加を決めた。今年6月に改定した宇宙基本計画でも「日本人飛行士の活躍の機会を確保する」と明記。これを受け、文科省は今年度の6倍以上となる関連予算を要求する。
このうち、月を回る軌道に新設される宇宙ステーションへ物資を運ぶ新型補給船「HTV―X」の開発費が600億円超と最多で、今年度の75億円から大幅に増える。宇宙ステーションの居住棟で使われる生命維持装置や、22年度に打ち上げ予定の日本初の無人月着陸機「SLIM(スリム)」の開発費も盛り込む。
米航空宇宙局(NASA)は今月、月探査に今後5年間で約280億ドル(約2・9兆円)が必要と発表した。日本は補給船の開発などで約2千億円を投じ、さらに月面探査車の開発も担当する見通しだ。
一方、日本が年約300億~400億円を負担している国際宇宙ステーション(ISS)も当面は運用が続く。有人宇宙活動の費用が急激に膨らみ、科学探査などの予算が圧迫される可能性がある。(石倉徹也)
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