9月16日(現地時間)のオンラインイベント「Facebook Connect」で新型VR HDM「Oculus Quest 2」を発表したFacebook CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏。
出典:Facebook
「Facebookは、日本でVRを本気で普及させようと目論んでいる」
同社が9月16日(現地時間)に発表した新型VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)「Oculus Quest 2」のレビュー機材を見て、実機を取り出す前からそう感じた。その理由を実機を交えて紹介していきたい。
外箱でわかる“日本で本気で売る”という意志
旧モデルのOculus Questの箱。知っている人ならピンとくる外観だが、Oculusのロゴも小さく、あまりわかりやすい外観とは言えない。
撮影:小林優多郎
前機種である「Oculus Quest」をOculus直販サイトで購入していたが、初代Questが届いた時は正直、「随分アメリカっぽいものを買ってしまった」と思ったのが実際だった。
箱は黒ベースでQuestの製品写真が大きく載っている。背面にはQuestの3つの特徴「All-In-One VR(VRをこれ1つで)」「Precision Controllers(精密なコントローラー)」「Easy Setup In Any Room(どんな場所でも簡単セットアップ)」と書いてあるが、いずれも英語だ。日本語はリサイクル表示の「紙」「プラ」と書いてあるのみ。
VRやOculus自体はとてもおもしろく、将来性の高い分野だと思っていたものの、現時点では一部のアーリーアダプターやマニアが中心の文化であり、このような外観の仕様にもまったく疑問にも思わなかった。
Oculus Quest 2の箱。側面にOculusロゴが大きくあしらわれたり、同梱品一覧や容量がハッキリと書いてあるのは、いかにも“店頭ウケ”しやすそうだ。
撮影:小林優多郎
しかし、Quest 2は違う。内箱は茶色い段ボール風だが、それを覆うカバーは白くて、ゲーム機のような手の込んだデザイン。すべて日本語で仕様や説明が書いてあり、背面には特徴よりも前に日本でも親しまれたタイトルのVR作品のサムネイルがあしらわれている。
外観だけを見れば、これがVRヘッドマウントディスプレイ(VR HMD)で、「買えばどんなものが遊べるか」が一目でわかる。Oculusロゴもかなり大きく印字されているため、他社製品と間違えることもない。見ればみるほど「量販店で置かれそうな仕様のデザインだ」と思った。
それもそのはずで、Quest 2はFacebookとしては国内初の「店頭販売」を行う製品だ。ビックカメラ、ヤマダ電気、ヨドバシカメラ、GEOなどの量販店が対象で、発表された直後には各社の店頭やECでの予約が始まっている。
日本は唯一独自の「PR戦略が許された国」だった
Oculus Quest 2(上)とOculus(下)の箱の裏面。Quest 2は日本語化されているだけではなく、コンテンツも日本ウケしそうなものを選んでいる。
撮影:小林優多郎
Oculusのようなグローバル全体で売る製品を、外箱だけでもローカライズ(日本向け仕様)することは、実は非常に難しい。
コストを抑えるなら、日本語の書かれたシールを上から貼る……といったことも考えられるが、すると前述の筆者のような「海外のよくわからない製品」という印象から抜け出さず、お客は手に取ってくれないし、当然、「わかりづらい商品」は店舗側もなかなかプッシュしてくれない。
また、本気で売れる商品にしていくには、英語から日本語に単に翻訳するだけではなく、その土地ごとにあったPR戦略を立てて文面を整える必要がある。ハードウェア製品を日常的に扱っているメーカーでもないと、相当にホネの折れる作業になる。
Facebook Reality Labsでコンテンツエコシステム ディレクターを務めるChris Pruett(クリス・プルエット)氏は、Quest 2販売に際して強く「日本で成功したい」と話している。
同社は日本市場を「戦略的市場」と捉えている。その証拠に日本マーケティングリードの上田俊輔氏は「日本はアメリカ以外で唯一、独自のプロモーションが許されている」と明かしている。
日本のコンテンツとクリエイターを世界へ
今回、Oculus Quest対応タイトルと紹介された日本発のコンテンツ例。
出典:Facebook
なぜ、FacebookはOculus事業(VR分野)で日本に注力するのか。
日本は、Facebookの初の海外法人として設立されたことや、Instagramの開発チームが世界で唯一配置されているなど、同社は以前から戦略的市場とみなしてきた。
上田氏は企業的な理由だけではなく、「日本市場を攻略することが、世界でVRを普及させることにつながる」と話す。
それは一般顧客が求めるクオリティーの高さという意味もあるだろうが、最も重視しているのは「優秀なクリエイターやコンテンツが日本にはある」(上田氏)からだ。
VR ADV「東京クロノス」シリーズの2作目「ALTDEUS: Beyond Chronos」の発売日がQuest 2と同日であることもオンラインイベントのFacebook Connectで発表された。
出典:Facebook
日本でVR文化を広めるために、日本のコンテンツやクリエイターを巻き込めれば、その成果物は世界に広がる。日本でVRの覇権を取ることは、Oculusのコンテンツエコシステムの活性化に直結するわけだ。
実際に、Quest 2を発表したオンラインのグローバルイベント「Facebook Connect」では、ほかの有名VRコンテンツとは別に、「Kizuna AI – Touch the Beat!」「Rez Infinite」「スペースチャンネル5 VR あらかた ダンシングショー」「リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを」の4作品のOculus Quest対応が発表。
さらに、クラウドファンディングで累計2028万円以上もの支援を集めた日本生まれのVRアドベンチャー(ADV)ゲーム「ALTDEUS: Beyond Chronos」の発売日がQuest 2の発売日(10月13日)である旨も大々的に発表されるなど、「日本重視」の姿勢に疑う余地はない。
大幅な性能向上&軽量化でも価格は4万円以下
写真左からOculus Quest 2、Quest。Quest 2の方が一回り小さいことがわかる。
撮影:小林優多郎
Quest 2単体を見ても“VRの普及期”への期待を感じることができる。
互換性についても「Quest 2と1のストアは共通。基本的には同じゲームを遊べる」(Pruett氏)ということもあり、初代QuestとQuest 2の決定的な機能差は存在しない。
ただし、チップセットには初代の2倍のCPUとGPUの性能を持つクアルコム製「Snapdragon XR2」を採用。メモリーは4GBから6GBに増加、中のディスプレイもピクセル数が50%増え、72から90Hzに画面描画速度(リフレッシュレート)も向上……などと、多くの性能向上が見られる。
Oculus Quest 2は、コンパクトで軽くて高性能なのに“初代より安い”。
撮影:小林優多郎
性能が向上しているにもかかわらず、駆動時間はほぼ変わらず2〜3時間、本体重量は503gと軽量化。そして、価格は64GBストレージ版が3万7180円、256GB版が4万9280円という驚きの値付けがされている(いずれも税込)。
この価格は、別の意味で筆者にとっても「衝撃」だった。実はわずか4カ月前の2020年5月に、筆者が直販サイトで購入した128GB版Oculus Questは6万2800円だったからだ(製品発表は2018年9月で、買ったのが遅かった)。
ちなみに、同日に発表されたソニーの「PlayStation 5」の価格もBlu-rayドライブを持たないDigital Editionで3万9980円であることを考えると、「ゲーム機としての価格」もかなり意識していることがうかがえる。
Oculus Quest 2が日本にVR文化を根付かせる起爆剤となるのか、今後のFacebookの取り組みから目が離せない。
(実機レビュー編は後日掲載)
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(文、撮影・小林優多郎)
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